- 東京医科歯科大学 入試問題解答・解説(2024年度医学部第2問・歯学部第2問)投稿者: 管理人
今回は過去問解説です。
東京医科歯科大学医学部及び歯学部の2024年度の入試問題です。(*東京医科歯科大学は2024年
10月に東京科学大学に統合されました)

\(\quad xyz\;\)空間において、点\(\;A\;(\;1\;,\;0\;,\;0\;),\;\;B\;(\;0\;,\;1\;,\;0\;),\;\;C\;(\;-1\;,\;0\;,\;0\;),\;\;D\;(\;0\;,\;0\;,\;1\;)\;\)をとり、線分\(\;CD\;\)の中点を\(\;M\;\)とする。さらに、\(N\;\)を線分\(\;BD\;\)上の点とする。また、\(Z\;\)軸と平行でない直線上の異なる2点\(\;P\;(\;x,\;y,\;z\;),\;Q\;(\;x’,\;y’,\;z’\;)\)に対して、\(\dfrac{z’-z}{\sqrt{(x’-x)^2+(y’-y)^2}}\)をベクトル\(\;\overrightarrow{PQ}\;\)の勾配と呼ぶ、\(\;\overrightarrow{AN}\;\)の勾配を\(\;t_1\;,\;\;\overrightarrow{NM}\;\)の勾配を\(\;t_2\;\)とするとき、以下の各問いに答えよ。
(1) \(t_2=0\;\)となるように\(\;N\;\)をとったとき、\(\;\;t_1\;\)の値を求めよ。
(2) \(l=\left|\overrightarrow{AN}\right|+\left|\overrightarrow{NM}\right|\;\;\)とし、\(\;l\;\)が最小となるように\(\;N\;\)をとったとき、\(\;l\;\)の値を求めよ。
(3) \(0\leqq t_2\leqq t_1\;\)となるように\(\;N\;\)をとったとき、\(\;N\;\)の\(\;y\;\)座標を\(\;s\;\)とする。\(\;s\;\)がとり得る値の範囲を求めよ。
まずは、図を書きましょう。
平面でも空間でも、グラフでも図形でも、
まずは、問題文の通りの図を、フリーハンドでざっと描いてみましょう。
慣れてきたら、
イメージすることで間違いを防止したり、手順を確認したり、解くためのヒントを得るための簡単な図を書く場合と、
ある程度正確な見た目に書いて、書き込むことによって正解を導くような重要な図の場合と、判断がつくようになりますから、それぞれ使い分けて書きます。
本問では、ある程度正確に図を書いておく方が、解答の見通しが良くなると思います。(空間想像力がしっかりしていて、頭の中で解決できるよ、という方は簡単な確認図でもよいかもしれませんが)
ただ、いずれにせよ、ミスを防ぐ意味からも、「何も図を書かない」のは避けた方が良いと思います。
では、小問(1)から解いていきます。
(1) \(t_2=0\;\)となるように\(\;N\;\)をとったとき、\(\;\;t_1\;\)の値を求めよ。
\(t_2\;,\;t_1\;\)と登場していますから、まずは、問題文の「勾配」というものを把握しないといけません。
日常用語では、「勾配が激しい坂道」とか「急勾配な屋根」などと言えばイメージできると思いますが、傾きのことです。
式を見てみると、分母が\(\;\sqrt{(x’-x)^2+(y’-y)^2}\;\)
これって、線分\(\;PQ\;\)の\(\;z\;\)軸方向の高さを捨象した(無視した)、\(\;PQ\;\)の\(\;xy\;\)平面上への正射影の長さ(\(xy\;\)平面の真上(z軸方向)から、光をあてたときの\(\;xy\;\)平面上での影の長さ)になっていますよね。
分子が\(\;z’-z\;\)ですから、\(z\;\)軸方向の高さの差です。
つまり、\(z\;\)軸の正の方向に高い方を\(\;Q\;\)とした場合、\(P\;\)を通り、\(xy\;\)平面に平行な平面上に\(\;Q\;\)から下した垂線の足を\(\;H\;\)とすると、\(\;\dfrac{HQ}{PH}\;\)を指しているわけですから、「勾配」という名にふさわしい内容になっていることが分かります。
三角形\(\;PHQ\;\)を含む平面で考えたら、通常の2次元の\(\;XY\;\)平面上での直線の変化の割合、すなわち「傾き」と同様のものを「勾配」と呼んで定義したわけです。
一見、余分な考察のようですが、実は、ここまでをイメージできると、本問の「難しそうなイメージ」がほとんど無くなります。
小問(1)に戻ります。
\(t_2=0\;\)ということは、\(\overrightarrow{NM}\;\)の勾配が\(\;0\;\)ということは、\(\;N,M\;\)の\(\;z\;\)座標が同じということです。
すなわち
\(M\;(\;-\dfrac{1}{2}\;,\;0\;,\;\dfrac{1}{2}\;)\)
\(N\;(\;x_n\;,\;y_n\;,\;z_n\;)\;\) とすると
\(t_2=0\;\)より
\(z_n-\dfrac{1}{2}=0\)
\(\qquad z_n=\dfrac{1}{2}\)
ここで、
\(N\;\)は\(\;BD\;\)上の点であり\(\;\;x_n=0\;\;\)、直線\(\;BD\;\)は、\(yz\;\)平面上の直線で\(\;\;z=-y+1\;\;\)だから、
\(z_n=-y_n+1\)
\(y_n=-z_n+1=-\dfrac{1}{2}+1=\dfrac{1}{2}\;\;\)より、\(\;\;N\;(\;0\;,\;\dfrac{1}{2}\;,\;\dfrac{1}{2}\;)\)
よって
\(t_1=\dfrac{\dfrac{1}{2}-0}{\sqrt{(0-1)^2+(\dfrac{1}{2}-0)^2}}\)
\(\quad =\dfrac{\dfrac{1}{2}}{\sqrt{1+\dfrac{1}{4}}}=\dfrac{\dfrac{1}{2}}{\sqrt{\dfrac{5}{4}}}=\dfrac{\dfrac{1}{2}}{\dfrac{\sqrt{5}}{2}}=\dfrac{1}{\sqrt{5}}\)
小問(1)は、「勾配」と問題文で定義した式に当てはめる計算だけでした。
本問のように、問題文で新しく定義したものを操作させるような問題は、既存の公式をそのまま当てはめるタイプの問題や解法を思い出すタイプの問題ではなく、問題文で与えられた定義に落ち着いて当てはめていくことが大切です。
このような問題は、一見難しそうに見えても、慌てずに定義を確認すれば得点しやすいことも少なくありません。
そして、「定義を理解して、正しく当てはめる」という姿勢は、大学での様々な分野の学びでも、大切にされる考え方です。
次は小問(2)です。
(2) \(l=\left|\overrightarrow{AN}\right|+\left|\overrightarrow{NM}\right|\;\;\)とし、\(\;l\;\)が最小となるように\(\;N\;\)をとったとき、\(\;l\;\)の値を求めよ。
小問(1)を処理した流れで、一瞬、「勾配」を使うのかという考えもちらつきますが、中学受験でも高校入試などでもお馴染みの「最短距離」の問題ですので、ワンパの解き方「直線で結ぶと最短」で解きます。
\(A\;\)から\(\;BD\;\)上の\(\;N\;\)を通って\(\;M\;\)までの最短距離です。
三角形\(\;ABD\;\)上の\(\;AN\;\)と三角形\(\;BCD\;\)上の\(\;NM\;\)の合計ですが、三角形\(\;BCD\;\)を辺\(\;BD\;\)を軸として展開し、三角形\(\;ABD\;\)と同一平面上に移します、このとき、求める最短距離は、展開後の点\(\:A\;\)と、点\(\;M\;\)を結ぶ線分\(\;AM\;\)の長さです。
三角形\(\;ABD\;\)と三角形\(\;BCD\;\)は、どちらも一辺の長さ\(\sqrt{2}\;\)の正三角形になっています。(ちなみに四角形\(\;ABCD\;\)はひし形です)
\(AM\;\)の長さをどうやって求めるか、ですが、
∠\(ADB\;=∠CDB\;=60°\) ですから、
∠\(ADM=120°\;\)です。
三角形\(\;ADM\;\)で余弦定理が使えると分かります。(これは基本的・典型的な利用です)
\(AM^2=AD^2+MD^2-2AD\cdot MD\cos120°\)
\(=(\sqrt{2})^2+\left(\dfrac{1}{\sqrt{2}}\right)^2-2\sqrt{2}\cdot\dfrac{1}{\sqrt{2}}\cdot\left(-\dfrac{1}{2}\right)\)
\(=2+\dfrac{1}{2}+1=\dfrac{7}{2}\)
\(l=\sqrt{\dfrac{7}{2}}=\dfrac{\sqrt{14}}{2}\)
小問(2)も、基本的・定番の「最短距離」の処理で、長さの計算もシンプルな余弦定理のみ、と比較的優しめの問題でした。
念のため好奇心から小問(2)での「勾配」利用を考えてみても、少なくとも「定番の最短距離処理」以上にシンプルな解答は無さそうです。(試験中は「知的好奇心」はせいぜい1~2分にとどめておきましょう。気を付けないと「簡単な解法が分かっても、なんとか「勾配」を利用したスマートな解法がないものか、と試験中に時間を潰してしまって、最後に時間不足になるなどの事態にならぬよう)
小問(3)です。
(3) \(0\leqq t_2\leqq t_1\;\)となるように\(\;N\;\)をとったとき、\(\;N\;\)の\(\;y\;\)座標を\(\;s\;\)とする。\(\;s\;\)がとり得る値の範囲を求めよ。
小問(3)は、小問(1)と同じく、問題文に「勾配」として与えられた式に当てはめて計算する問題ですが、内容的には基礎的な計算をするのみの問題で、比較的平易な問題です。
\(N\;\)の\(\;y\;\)座標を\(s\;\)とすると、
\(N\;\)は\(\;BD\;\)上であるから \(0\leqq s\leqq 1\;\) ・・・①
\(\qquad N\;(\;0\;,\;s\;,\;-s+1\;)\) となる。
\(t_1=\dfrac{-s+1-0}{\sqrt{(0-1)^2+(s-0)^2}}=\dfrac{1-s}{\sqrt{s^2+1}}\)
\(t_2=\dfrac{\dfrac{1}{2}+s-1}{\sqrt{\left(-\dfrac{1}{2}-0\right)^2+(0-s)^2}}=\dfrac{s-\dfrac{1}{2}}{\sqrt{s^2+\dfrac{1}{4}}}\)
\(\qquad 0\leqq\dfrac{s-\dfrac{1}{2}}{\sqrt{s^2+\dfrac{1}{4}}}\leqq\dfrac{1-s}{\sqrt{s^2+1}}\)
左側の不等式より \(s-\dfrac{1}{2}\geqq0\qquad,\qquad s\geqq\dfrac{1}{2}\) ・・・②
右側の不等式の両辺\(\;\geqq0\;\)であるから、2乗すると
\(\dfrac{\left(s-\dfrac{1}{2}\right)^2}{s^2+\dfrac{1}{4}}\leqq\dfrac{(1-s)^2}{s^2+1}\)
\(\dfrac{4s^2-4s+1}{4s^2+1}\leqq\dfrac{1-2s+s^2}{s^2+1}\)
両辺に\(\;(4s^2+1)(s^2+1)\;\)をかけて
\((4s^2-4s+1)(s^2+1)\)
\(\qquad \leqq(1-2s+s^2)(4s^2+1)\)
展開すると
\(4s^4+4s^2-4s^3-4s+s^2+1\)
\(\qquad \leqq4s^2+1-8s^3-2s+4s^4+s^2\)
整理すると
\(4s^3-2s\leqq0\)
\(2s^3-s\leqq0\)
\(s(2s^2-1)\leqq0\)
\(s\geqq0\;\)より \(2s^2-1\leqq0\)
\(\left(s^2-\dfrac{1}{2}\right)\leqq0\)
\(\left(s-\dfrac{1}{\sqrt{2}}\right)\left(s+\dfrac{1}{\sqrt{2}}\right)\leqq0\)
\(\qquad -\dfrac{1}{\sqrt{2}}\leqq s\leqq\dfrac{1}{\sqrt{2}}\) ・・・③
①,②,③より
\(\qquad \dfrac{1}{2}\leqq s\leqq\dfrac{1}{\sqrt{2}}\)
いかがだったでしょうか。
小問(3)は、最初に「勾配」の式にあてはめる以外は、基礎的な計算処理なので、思ったより易しい印象を持たれた人もいると思います。
本問は、小問(1)⇒定義への当てはめ、小問(2)空間図形の最短距離(中高大入試問題の必須知識)
小問(3)定義への当てはめと基本的な計算処理
どの小問も、特に難しい所は無かったのではないかと思います。
しいて言うなら、各小問につながりが無く、また、「勾配」は当てはめるのみで答が出てしまって、「これでいいの?」と少し拍子抜けする事ですが、
問題文本文に「新しい定義」が設けられていてそれについて答えさせるタイプの問題は、上にも述べたように、「その場での理解と思考、正確な当てはめ」を求める反面、「必要な理解・思考の難易度としては比較的良心的な取り組みやすい範囲にとどまるものが多い」ということです。
落ち着いて確実に得点したい問題です。
お疲れ様でした。
本問は、特に取り上げる予定ではありませんでしたが、同じ年度の大問1を取り上げた関係上、過去問対策で学習する方の便宜を考えて、他の大問についても取り扱うことにしました。
次回未定です。
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